日記

知らない女子中学生に恋した



毎朝何百回も左折している信号を左折したら、歩道で止まっている女子中学生と目が合った。真っ白なヘルメットをかぶって、細い体には似合わない大きくてギラギラした自転車に乗っていた。今朝はとても寒かったので、女子中学生はマフラーをぐるぐる巻きにして、ほっぺたを真っ赤に染めていた。きっとお母さんから教わったのかもしれない、危ないので車道から少し離れたところに止まって、私(車)の様子を伺うように見つめていた。私は、一瞬のことだったけれど、その風景を写真のように頭の中に保存することに成功した。私の目に写ったものをそのまま現像できる力があれば、きっとコンテストで入賞できたと思う。
女子中学生は儚くて、片方のスニーカーを取り上げただけで崩れてしまいそうだった。もしかしたら学校ではいじめっ子かもしれないし、彼氏とキスしたことがあるのかもしれないけれど、どうでもいいことだった。私は、あの信号で自転車に乗っていた女子中学生に恋をしてしまった。そこにいた女子中学生は、少し裕福な家庭で育ち、お母さんは専業主婦だった。学校では大人しいけれど整った顔立ちをしているので、男子からはこっそり人気があった。けれども本人はそんなことには気付かずにメガネの親友と昼休みに本を読んだりする。女子中学生はこれからたくさんいろんなことを経験していくのだと思った。自分の好きなことを勉強して、自分の好きな人と思い出を作るのだろうなと思った。私にはそれが羨ましくて悔しかった。女子中学生にこれから待ちうけるであろう苦難さえも欲しくてたまらなかった。

そのあと家に帰って30分くらい犬をなでて、脳みそが溶けてきたので寝る準備をしている。お金の発生しない時間外労働をしても、私の脳みそは、何も反応しなくなった。今朝は女子中学生のせいで3つ以上の感情が発生したけれど、すぐに下の方に沈殿してしまっている。何も考えないことはとても楽だと気付いた。誰かの言うとおり、知ろうとしないことが罪であるならば、私は悪い人のままでいたいとおもった。